PCが立ち上がった瞬間、PWMファンが高速で回るのを抑制する(実装・失敗編)

前回、このような記事を書きました:
PCが立ち上がった瞬間、PWMファンが高速で回るのを抑制する(理論編)

結論から言うと実装して失敗しました。

遅延回路としての仕様自体は満たすものができたのですが、およそ一秒後にFANが高速回転し出しました。

遅延回路の時定数を決めるコンデンサを22uから100uに変えても、数秒後にFANが一旦高速回転し、しばらくすると収まるようになりました。

要はFANを電源に繋いだ瞬間は高速回転するようです。
定電流回路等等を用いて、もう少し回路を考え直さなければいけないようです。

PCが立ち上がった瞬間、PWMファンが高速で回るのを抑制する(理論編)


PWMファン(マザーボードからの回転数制御用のパルス信号を受け取れる4Pin入力のファン)は便利なのですが、パソコンのスイッチを入れた瞬間は高速で回転し出します。
これは仕様上仕方のないことだと考えられるのですが、うるさいのでなんとかする方法を考えてみました。

そもそも高速で回転し出す原因は、パソコンの起動順序を考えると推測が付きます

1.電源スイッチをONにするという1bit情報を明示的に与える

2.マザーボードの電源が入ってファンに電源が供給される

3.UEFIまたはBIOSが立ち上がる

4.ここでやっとPWMファンがマザーボードの制御下に入る

ここで考えられる対策として、2.の後にファンの電源供給経路に0.5から1秒くらいの遅延回路を入れる方法があります。

遅延回路といっても、何通りも構成を考えられます。

まず思い浮かぶのはFET一個とRC時定数回路で構成された簡単な回路ですが、過渡時の挙動がゲート電流に左右されそうです。ゲート電流なんて僅かですが、気になるものは気になります。

論理回路で離散値を持たせることにより、出力のチャタリングを防ぐことができます。論理回路を使う方法についても何通りも考えられます。今回はその中でもコストが低いNAND回路とスイッチ用MOSFETで構成された遅延回路のシミュレーションをLTSpiceで行いました。

上記がシミュレーションをした試作回路です[1]。定数についてはまだ見直す必要があります。
NANDの定数やMOSFETのモデルは、秋月電子にあるものと近い値を設定しました。

R3とC1で時定数を設定します。

抵抗とコンデンサのみで構成された回路の過渡出力電圧は[2]
$$ V_{out}=(1-e^{-\frac{1}{RC}t})V_{in}$$

であり、これをRCについてVout=Vth, Vin=5で解くことで[3]、抵抗値とコンデンサの定数の積を求められます[4]
R10は駆動対象のFANです。50オームという値は適当です。

上図が解析結果です。
定数については見直す必要がありますが、ある時間でFETのドレインが接地され、FANが駆動されている様子は見られるので基本的には動くと考えられます。

解析については、LTSpiceの過渡解析で行っているのですが、電圧源を0.001秒後にオンにするように設定しています。
これは、0秒後からオンにするとLTSpiceが定常解析を行ってしまうためです。この仕様でしばらく悩みました。

しかし、これだと0秒後には既にNAND回路は動作しています。そのせいで0から0.001秒付近の挙動が怪しいようです[5]。実際にはNANDがONになった瞬間の一段目の出力は1、二段目の出力は0であり、FETは駆動されていないので問題ないでしょう。

実装は次回 -> PCが立ち上がった瞬間、PWMファンが高速で回るのを抑制する(理論編)