Wikileaksが公開したTPP関連文書の解釈について異議を唱える

(Last Updated On: 2011年11月12日)

TPPの話でもしよう.
在ニュージーランド米大使館が2010年2月に本国に送ったものとして,Wikileaksで次のような記事が公開されている.

10WELLINGTON65

この文書の3章が日本絡みであり,物議を醸している.

3. (SBU) On multilateral issues, Sinclair emphasized that New
Zealand sees the TPP as a platform for future trade integration in
the Asia Pacific. If the eight initial members can reach the
"gold standard" on the TPP, it will "put the squeeze" on Japan,
Korea and others, which is when the "real payoff" will come in the
long term. He also stated that another challenge in negotiating is
that the current economic and commercial situation has put a great
deal of pressure on domestic agendas. Negotiators must therefore
be very cognizant of the impact on jobs, wages, and other such
factors. When asked what New Zealand's position is on including
new members, Sinclair put forth that "smaller is better" for the
current deal. However, he emphasized, that what is more important
is U.S. Congressional approval and if "critical mass" can be
achieved with the initial eight. New Zealand will take a
"constructive view" if the group needs to "bulk up" and include
Malaysia, for example.

これについて,ウォール・ストリート・ジャーナルで次のような記事が公開されている.

TPP反対派が問題視するウィキリークス公開の米公電

上記サイトからの引用:

(農協団体系の業界専門紙が)掲載したのは公電の次の部分だ。「On multilateral issues, Sinclair emphasized that New Zealand sees the TPP as a platform for future trade integration in the Asia Pacific. If the eight initial members can reach the “gold standard” on the TPP, it will “put the squeeze” on Japan, Korea and others, which is when the “real payoff” will come in the long term.」

業界紙はこれを次のように翻訳している。「ニュージーランド外交貿易省のマーク・シンクレアTPP首席交渉官は『TPPが将来のアジア太平洋の通商統合に向けた基盤である。もし、当初のTPP交渉8カ国でゴールド・スタンダード(絶対標準)に合意できれば、日本、韓国その他の国を押しつぶすことができる。それが長期的な目標だ』と語った(米国大使館公電から)」

訳者は「農協団体系の業界専門紙」であるらしい.なんとも,よく頑張ったものである.

翻訳としては下記サイトのほうが出来が良い.ついでに少し書き足した.僕が間違えてたら,そんときはゴメン.

ウィキリークス TPP外交文書を全訳公開!

3.(SBU)戦略分野毎の課題:多国間関係の課題について

 NZのシンクレア氏は、NZはTPPが将来のアジア・太平洋地域における通商に関する統合のプラットフォ-ムであると見ていることを強調した。
 もし最初の8ヶ国(シンガポール,ブルネイ,チリ,ニュージーランド,アメリカ,オーストラリア,ベトナム,ペルー)がgold standardに辿り着けば、TPPは日本や韓国、その他の国々に対する強力な圧力(put the squeeze)となり、まさに長期的な利益を得ることとなるだろう、と彼は強調した。更に、交渉過程におけるもう一つの重要な課題は、今の経済状況がNZの国内課題に大変な難題を突き付けてしまっていることであると述べた。従って交渉担当者は、相手国国内の雇用、賃金その他関連する事柄が受ける影響について深刻に認識しなければならないのである。
 新たなTPP参加国を加えることについてのスタンスを尋ねたところ、彼は現時点での交渉については少ないほど望ましいとの見解であった。しかし、もっと重要なことは米国議会における承認であり、最初の8ヶ国がcritical mass/量から質への飛躍が出来るかどうかに到達できるかどうか、であると強調した。
 ニュ-ジ-ランドはもし最初の8ヶ国が、例えばマレ-シアを加えるなど加盟国が増える必要があれば、その時は前向きに捉えるだろう。

この文書を「日本がTPPに参加してしまうと,日本(あるいは日本の農家)が押しつぶされてしまう」と読み取るのはあまりにもぶっ飛んでいると思う.

2 thoughts on “Wikileaksが公開したTPP関連文書の解釈について異議を唱える

  1. 交渉はゲームで考えましょう。

    squeeze
    v
    Games To force (an opponent) to use a potentially winning card in a trick he or she cannot take in bridge.
    n
    Games A forced discard of a potentially winning card in bridge.

    wikiのコントラクトブリッジにも
    スクイズ  ディフェンダーが複数のスーツを守っている場合に、そのどちらかを捨てさせるテクニック。
    とあります。

    put the squeeze とは、
    相手が手に持っている、良いタイミングで使えば勝負に勝てる良いカードを、
    強制的に無効にして捨てさせることです。

  2. 成るほど「コントラクトブリッジ」なるゲームを初めて知りました.

    保守的な向きはput the squeezeの訳を強調する反面,大意を曲解しているというのが僕の主張です.

    原文では「TPPが8ヶ国間で締結され,gold standardに辿り着けば日本を"put the squeeze"できる」と言っています.
    これは,日本がTPPに参加するか否かということとは直接関係ないはずです.
    しかし,業界紙はこの翻訳を以てTPP不参加を呼びかけているそうです.不参加は即ちこの帰結を前にして手をこまねくことではないでしょうか.

    危機を打破するなら,むしろ参加を表明して内側から攻撃するしかないでしょう.それだけの政治力が日本にあれば・・・の話ですが.

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